筋トレで腕を上げる途中に肩が痛くなった症例
ご相談いただいた症状
・数年前から週3〜4回のペースで筋力トレーニングを続けていた。
・ベンチプレスやショルダープレスを行った際に、右肩の前側から外側に痛みを感じるようになった。
・最初はトレーニング中だけだったが、徐々に日常生活でも腕を横から上げる途中で痛みが出るようになった。
・腕を下ろしている時にはほとんど痛みはなかった。
・腕を横から上げていく途中の角度で痛みが強く、完全に上まで上げると途中より楽になっていた。
・トレーニング後にストレッチやケアをする習慣がほとんどなかった。
・筋トレをできるだけ長期間休まず、早めに復帰したいとのことで来院された。
原因
腕を上げる途中だけ肩が痛むのはなぜ?
肩の痛みにはさまざまな原因があります。
今回特徴的だったのは、腕を下ろしている時や完全に上まで上げた時よりも、腕を横から上げていく途中の一定の角度で痛みが強くなっていたことです。
このように腕を上げる途中で痛みが現れる状態は「ペインフルアーク」と呼ばれ、肩峰下インピンジメントなどでみられる所見の一つです。
ただし、ペインフルアークがあるからといって、それだけで特定の疾患を断定することはできません。
今回の患者さんの身体を確認すると、
・腕を横から上げる途中で右肩に痛みが出ていたこと
・大胸筋・小胸筋の緊張が強かったこと
・広背筋にも硬さがみられたこと
・肩甲骨の動きが低下していたこと
・胸郭の動きも少なくなっていたこと
・トレーニング後のストレッチやケアをほとんど行っていなかったこと
・強い筋力低下や安静時の強い痛みはみられなかったこと
が確認されました。
特に大胸筋や小胸筋など胸の筋肉が硬くなり、肩甲骨の動きが少ない状態でベンチプレスやショルダープレスを繰り返していました。
そこで今回は、痛みが出ている肩だけに施術するのではなく、胸・肩甲骨・胸郭まで含めて動きを改善し、トレーニング時に肩だけへ負担が集中しにくい状態を作ることを目標にしました。
治療内容
1回目
初回来院時は、腕を横から上げていく途中で右肩に痛みが出ていました。
ベンチプレスやショルダープレスのような押す動作でも痛みがありました。
まず肩周囲の状態を確認し、痛みが出ている部分に対して超音波治療を行いました。
さらに、
・大胸筋
・小胸筋
・広背筋
・肩甲骨周囲
の筋緊張を手技療法で緩め、肩甲骨と胸郭が動きやすい状態を作りました。
施術後に再度腕を上げてもらうと、来院時と比較して痛みが軽減し、腕もスムーズに上げられるようになりました。
ただし、この時点ではトレーニング時の負荷に耐えられるかまでは確認できないため、ベンチプレスやショルダープレスなど痛みが出る上半身のプレス系種目は一時的に休止してもらいました。
脚など、右肩に負担がかからず痛みが出ないトレーニングについては継続してもらいました。
2回目
約1週間後に来院。
日常生活で腕を上げた際の痛みはほとんど感じなくなっていました。
一方で、軽い負荷で上半身を動かした際には、右肩に多少の違和感が残っていました。
身体を確認すると、大胸筋や小胸筋の緊張は初回より軽減していましたが、肩甲骨や胸郭にはまだ動きの硬さが残っていました。
そこで肩周囲への超音波治療を継続し、胸・広背筋・肩甲骨周囲への手技療法を行いました。
施術後に痛みがないことを確認したうえで、軽い重量からベンチプレスを再開してもらいました。
また、再び同じ状態を繰り返さないために、
・大胸筋、小胸筋のストレッチ
・広背筋のストレッチ
・肩甲骨を動かすウォーミングアップ
をトレーニング前後に行うよう指導しました。
3回目
さらに約1週間後に来院。
軽い重量から徐々に負荷を戻していましたが、ベンチプレスを行っても右肩の痛みは出ていませんでした。
ショルダープレスについても負荷を調整しながら再開し、痛みなく行えるようになっていました。
日常生活でも、
・腕を横から上げる
・頭より高い位置まで腕を上げる
・物を持ち上げる
といった動作で症状はみられませんでした。
肩の可動域についても初回来院時にみられた左右差がほとんどなくなり、普段のトレーニングに近い負荷をかけても症状が再発しませんでした。
そのため、自宅でのストレッチとトレーニング前後のセルフケアを継続してもらうことをお伝えし、3回目で今回の施術を終了しました。
治療回数/期間
治療回数:3回
治療期間:約3週間
治療頻度:週1回
今回は強い筋力低下や安静時痛などはなく、肩甲骨や胸郭周囲の動きを改善すると、その場で肩の動作痛にも変化がみられました。
そのため長期間トレーニングを完全に休止するのではなく、
痛みが出るプレス系種目を一時休止
↓
日常生活での痛みが消失
↓
軽い重量からベンチプレスを再開
↓
ショルダープレスも再開
↓
通常のトレーニングへ復帰
と段階的に負荷を戻しました。
結果と予防
3回の施術によって、
・腕を横から上げる途中の右肩の痛み
・ベンチプレス時の肩の痛み
・ショルダープレス時の肩の痛み
・肩甲骨の動き
・胸郭周囲の硬さ
はいずれも改善しました。
今回のポイントは、「筋トレで肩が痛いから筋トレをすべて禁止する」という対応をしなかったことです。
痛みが出るベンチプレスやショルダープレスは一時的に休止しましたが、肩に負担がかからず痛みが出ないトレーニングについては継続してもらいました。
症状が改善してからも、いきなり以前と同じ重量に戻すのではなく、軽い重量から徐々に負荷を上げました。
また、今回の患者さんは肩そのものだけでなく、大胸筋・小胸筋・広背筋の硬さと肩甲骨・胸郭の動きの低下がみられました。
再発予防として、
・トレーニング前に肩甲骨を十分に動かすこと
・大胸筋、小胸筋のストレッチを行うこと
・広背筋の柔軟性を維持すること
・痛みが出ている状態で無理に重量を上げないこと
・トレーニング後にもストレッチやケアを行うこと
・痛みがなくても急激に重量やトレーニング量を増やさないこと
をお伝えしました。
筋トレによる肩の痛みでは、痛む場所だけでなく、肩甲骨や胸郭が十分に動いているか、フォームに対して重量が大きくなりすぎていないかなどを確認することも大切です。
当院では「筋トレをやめる」ことだけを選択肢にするのではなく、症状の程度を確認しながら、できるトレーニングと一時的に避ける種目を分け、段階的な復帰をサポートしています。
そのほかのお悩みへの改善例も多数ございます。
「こんな症状でも診てもらえますか?」と
お気軽にお問合せください。